統合失調症とヨガ

先日NHKの番組「名医にQ」で、アンコール「統合失調症」の特集をやっていました。
「精神分裂症」から「統合失調症」へと呼称が変わりましたが、Wikiではこのように説明されています。http://ja.wikipedia.org/wiki/統合失調症

抗うつ薬を減らすために

番組では投薬、社会心理療法などについての解説がなされていましたが、ぜひ「薬を減らす方法」についても考えていただけたらと思います。薬を投与することを「処方」というのかもしれませんが、薬を減らしていくという「処方」こそ精神系疾患治療のグランド・デザインなのではないかと思います。

周りの方の健康

番組でも指摘がありましたが、本人はもとより家族や友人たちにかかるストレスが問題として取り上げられていました。適度な運動や趣味、家族会への参加で気分転換を、とのことでしたが、取り組める運動や趣味に取り組めないほど追い込まれているのがご家族の実態なのではないかと思います。私ですら追い込まれている時は誰に何を言われても無理です。ヨガすらできなくなります(と言うと、このブログの説得力がまるでなくなってしまうのですが・・・)

諸外国での取組み

薬を減らす方法、そして家族の方々のストレス緩和にも、すでに臨床の現場でもヨガのポーズと呼吸法が活用されていますが、日本でもヨガセラピーを普及させていくにあたり、気をつけなくてはいけない点をいくつか述べたいと思います。

(1) ヨガすぎるものを押し付けない:

まず、患者さんたちは「元来ヨガには興味がない」という前提を指導する側は理解しておく必要があります。日本でヨガがブームになっているのは、ヨガを好きな人たちの間でです。ヨガを「症状緩和のための手段」として使うには至っていません。悪いことではないのですが、ヨガの仕事に携わっている側は、つい想いが入りすぎてしまい、ヨガの素晴らしさ、ヨガの楽しさばかりを前面に押し出してしまいがちですが、目の前の患者さんたちにとってはヨガだろうが何だろうが自分を楽にしてくれればいいわけで、あまり壮大なことを言われてもひいてしまいます。善悪、幸せ、「全身のエネルギー」や「見えない力」「アパナ」「プラナ」など漠然としたヨガ用語は必要ないのです。むしろそういう言葉を使われることに抵抗感がある方々の方がほとんどであることに、ヨガを日常楽しんでいる私たちは気がついていないことが多いものです。
ヨガの良さは私たちがわかっていればいいのです。処方として使う場面ではメリットはオブラートに隠し、大切なのは私たちが伝道師になることではなく、目の前の患者さん一人一人(一人一人苦しみが異なります)が今できることを一緒に探りながら楽にしてあげることに徹することです。

(2) ポーズありきではない:急がないこと

ポーズができるようになるのはずっと後のことです。想像してみて下さい。もし自分が極度の神経衰弱に陥っていたときに、このポーズが効くから、といって脚を大きく開き胸を開いてトライアングルのポーズがとれるでしょうか。
もちろん、身体を動かすことで心の状態に逆フィードバックをもたらすこと(ソマティックサイコロジーの活用)がヨガセラピーの目標ではありますが、決して急いではいけません。どうしてもヨガを教えるとなると、ポーズのように形の見えるものを提案したくなりますが、患者さんは私たちが思う以上に身体を動かそうという気になれていません。「適度な運動で気分転換を」なんていうのは、言葉で提案するのは簡単ですが、そんなことができていればご家族も含め、苦労してないわけです。人が生活の中で運動を始めることは思うより容易ではないという前提に立ち、まず、ゆっくりとした呼吸を楽しむことから始めましょう。

(3) 呼吸法その1 : 腕を枕にして床にうつ伏せになってみましょう。

床にお腹があたりますか?ゆっくり呼吸をしながら、お腹が床にあたる感触を数えてみましょう。もし可能なら、背中に雑誌やかばんなど、適度な重みがあるもの(本当は2-3kgぐらいのお米の袋がいいのですが)を乗せてみましょう。自分が呼吸していることがより意識しやすくなるはずです。この呼吸を20-30回数えてみる、というのが実際のヨガセラピーの現場で使われている療法です。
何に効くのでしょう?:自分の呼吸を数えることに専念することで、副交感神経の活動を誘引していきます。マインドフルネス瞑想法のひとつで、パニック症候群の治療等にも使われています。

(4) 呼吸法その2: うずくまって、お尻のあったかさを感じるポーズ。

膝が痛くなければ、という前提でですが、お布団の上でもベッドの上でも、膝を曲げてうずくまってみましょう。写真のように、枕やお布団に抱きついてもかまいません。ヨガでいう子供のポーズですが、うずくまっている人の腰の上に、もう一人の人が後ろ向きで座ってみてあげましょう。それで、ゆっくり呼吸してみます。呼吸が深くなりますね。そして、人のお尻の温かさ、これを感じてみましょう。
番組でも、回復を阻む最大の的は「孤独感」だと言っていました。
グループホームに出かける勇気がない患者さんにご家族の方が遊び半分の気持ちで試してみてあげて下さい。実は、このセラピー、座ってあげる方の心にもぽっかり温かい気持ちをもたらします。呼吸するってこんなに気持ちいいんだ!と密かな発見のあるポーズです。また同時に腰回りが弛み、日常生活の姿勢も楽になります。

(5) 呼吸法その3 : 片鼻呼吸法(特にご家族の方)

正式には右手の人差し指と中指を眉と眉の間にあてて行いますが、難しく考えて日常取り組めない方法より、簡便法でも思い立ったらすぐできる方法の方が覚えていて役に立ちます。
右手の親指と人差し指で、鼻をつまんでみましょう。
さあ、始めましょう。
  1. 親指で右の鼻を閉じたまま、左の鼻の穴をあけてゆっくり吸ってみます。今度は左の鼻の穴を塞ぎ、右からゆっくり吐きます。
  2. 吐き切ったら、右の鼻からゆっくり吸ってみましょう。吸い切ったら再び親指で右の鼻を塞ぎます。左の鼻からゆっくり息を吐きます。吐き切ったら左の鼻からゆっくり吸います。
  3. どちらも吸う時間より、吐く時間を気持ち長めにとってみましょう。
この呼吸法は自分の意識ではどうにもならない「自律神経」のバランスを整えイライラを鎮め心に余裕を宿すと言われています。特に患者さんと接するご家族、友人の方々に試してみていただきたい呼吸法です。

今回は3つの呼吸法をご紹介させていただきましたが、もちろん少し元気になってきたら、ぜひヨガ教室にも足を運んでみて下さい。身体を動かしたい、と思うようになるところまで持っていくことがまずは大切、そのためにも自分を急かさず、初歩の初歩でもこんなに楽になった!というところを探ってみて下さい。

うつ伏せや子供のポーズが難しく感じられる方は、抱き枕と壁を使ってしたのような座り方でもOKです。まずはヨガ=逆立ちなどと思わず、委ねてみるという練習から始めて見ましょう!すべてのポーズは患者さんのみならず、ご家族の方にも試していただきたいセラピーです。

2010.04.26 Monday 07:47 | 統合失調症とヨガ | - | -

7つの穴のどれかを閉めて

加島祥造先生の「TAO - 老子」を読んでいます。

第五十二章「帰元」

「人には目鼻耳口という穴があいているが、この7つの穴をいつも開けて、外の刺戟ばかり追っていたら、心も身体もやがては消耗しちまう。時にはその穴のどれかを閉めて、母親のところに戻るがいい。そうすれば身も心も長持ちするんだよ。」 

お腹に子供を身ごもった今でも、確かに穴をふさいで母親の胎内に戻れたらどんなに楽かと思うことは多々あります。
2010.04.25 Sunday 10:57 | 素敵なお話 | - | -

アスペルガー症候群とヨガ

今日のクローズアップ現代ではアスペルガーシンドロームが取り上げられますが、海外ではこの症状の患者さんにもヨガが処方箋として活用されている事例があります。
  • ゆっくりした呼吸、動作をゆっくり行うことによって、まず患者さんの緊張を和らげることができます。 
  • たとえば、ヨガの呼吸や肩回しによって、手をパタパタさせる症状の軽減がみられました。 
  • ヨガを続けることによってストレスフルな状況に置かれたときに自身を落ち着いて対処させる方法が身につく- 自分を信じる力を培っていくことができると言われています。
  • 明かりを少し落とし、静かな環境で行うことによって副交感神経の働きを高めます。アイピロー等を眼の上に乗せて休むことも効果的です。 
  • 人と比べたり競争したりしないこと、というヨガの考え方は患者さんに取ってとても楽なものです。同じように身体を動かすのでもチームスポーツや競技ではむしろ緊張を高めてしまうからです。 
  • ヨガは一般的な運動のように筋肉をほぐしバランス力を高めるだけでなく、リラックスした集中力をも高めることができます。
また、子供たちの治療にヨガをプログラムとして導入している事例が非常に数多く見受けられます。下記は自閉症圏障害を持つ子供たちのための書籍ですが、この中でもプログラムはアスペルガー症候群に応用できることが述べられています。
http://www.jkp.com/catalogue/book/9781843108177 
2010.04.21 Wednesday 06:18 | 自閉症、アスペルガー症候群とヨガ | - | -

園芸は心身の不調になぜいいか

園芸で心身の不調を回復された、というお話を聞くことがあります。
自分のリズムと異なるリズムのものと生活をともにすることにより、相対的に自分のリズムの割合が下がってくる、これが Egoを自然に減らしちょうどいいバランスにもっていくのにいいのだそうです。
2010.04.19 Monday 16:59 | ヨガと組み合わせて | - | -

困ったら肚に聞こう!セカンドブレインとしての胃腸

今、胃や腸(ガッツ 〜 消化器)の健康が私たちの心身の健全性に及ぼす影響、いわば「セカンド・ブレイン」としての働きが注目を集めています。
頭で判断しようとすることには限界がある。人類はこれまで頭で判断しようとして多くの過ちを犯してきた。それに比べて、腹の底で下した判断というものは意外とあたっていることが多い。 また、胃腸が弱っていると、決断力が弱ってくるということらしいのですが、皆さんも心当たり、ありますか。
生命の歴史をひもとくと、 胃や腸は5億年前に生まれ、私たちの脳は3万年前にやっと形成されたのだそうです。キャリアが違いますね!
2010.04.19 Monday 10:15 | - | - | -

ヨガを愛する=女性としての自分を愛する:乳がん検診・更年期障害

今日はこちらのサイト「Dear Woman」のご紹介です。
乳がんのリハビリにヨガが効果的なのは当ブログでもご紹介させていただいておりますが、一方で、ヨガをしている方々にも、もっと乳がん検診への意識を持っていただきたい、というメッセージをいただいております。

ヨガを愛することは、女性であれば女性としての自分の生を大切にすること、そしてそれは周りの人をも愛することにつながります。
「更年期から始めるヨガ」コラム掲載いただきました。
こちらもよろしければご覧下さい。

***Dear Woman 様 掲載記事の内容はこちら***

「ヨガが女性の不調全般にいいらしい」 「エクササイズが更年期の症状を和らげる」などと聞いても、ではいったいどこから始めたらいいのか、と迷われている方も多いと思います。あるいは「エクササイズは続かなくて・・・」「ヨガは身体が硬いから無理・・」と尻込みされている方もいらっしゃるのではないでしょうか。 

更年期こそヨガを始めるベストタイミング 

実は更年期はヨガを始めるのに一番いいタイミングだと言われています。
もちろん若い頃からヨガに親しむチャンスがあることにこしたことはないのですが、ヨガという考え方の恩恵を最も享受できるのは、子供を授かったとき、そして更年期のように、いわば女性に取ってこれまでの生活や環境ががらりと変わってしまう「ライフタイム・チェンジ」の時期なのです。 これまで自分が重きを置いてきた価値観や信じてきたものが、自分を裏切るかのように変わっていくかもしれません。そういう局面でこそあらためて見つめ直せる何かを、ゆっくりと時間をかけて考えられる、いわば「神様がくれた夏休み」であるとも言えます。 今まで忙しくて、子供や旦那さんのため、あるいは仕事のためばかりに費やしてきた時間を、今は自分のために使いなさいと言われているんだな、と思いちょっと回り道するぐらいの気持ちでヨガを始めていただけたらと思います。 

比べられない裏技で気楽に参加! 

ヨガのクラスでよく先生が言うことに「隣の人と比べないでいいんですよ」「無理をしないで、自分のペースで」「自分の身体の声を聴いて」というのがあります。そうはいっても更年期専門のクラスでない限り、どうしても隣の人ができているポーズが気になるもの。自分ができないことばかりに気を取られてしまいます。そこでお薦めしたいのが、クラスが始まる前に「自分は今、更年期であまり体調は良くないけれど、ヨガがいいって聞いたので来てみました」と思い切ってインストラクターの先生に話しかけてみましょう。インストラクターの先生は皆ヨガが女性のいいことを知っています。何も言わずに参加すればもしかして、もっと手を挙げて、と話しかけてくるかもしれませんが、きちんとお話ししておくことによって、皆さんは自分のペースでヨガを楽しんでいいのです。 

身体が硬くても楽しめるコツ 

ポイントは4つあります。足首、膝の裏、脇の下、首の前をひたすら揉んでから(足首は回してから)クラスに参加してみましょう。 驚くほど関節の可動域が高まります。 こう考えると楽になります。 
  • ヨガはストレッチではない。 
  • ヨガは心と身体にスペースをつくる時間。 
  • 身体にスペースができてくると、
  • 心にもスペースができてきます。 

なかなか続かないときは・・お土産ポーズ 

そうはいっても1時間のクラスは長いし、なかなか気力体力ともに続かないわ・・という場合もあります。そんな時は、一つクラスで覚えることのできたポーズを「お土産ポーズ」として持ち帰って、自宅でやってみましょう。更年期ヨガが盛んな北米ですら、悩みを抱えた女性たちが皆、開眼したかのようにヨガ教室に通っているわけではありません。クラスで覚えた「これならできる」というポーズを細く長く続けているうちに症状が緩和した、という声の方が意外と多いものです。
2010.04.17 Saturday 17:30 | Link | - | -

ケアマネージャーさん、セラピストさん向けのヨガコラム

ケアマネ.com」にてケアマネージャーさん向けのヨガコラムを連載しています。http://www.care-mane.com/member/feature/?action_feature_new=true&category_id=16

ひとさぽ」にて施術師さんセラピストさん向けのヨガコラムも始まりました。

いずれのサイトも同じ業界でお仕事をされている方々が、喜びや悩みを相談し合い「頑張っているけど辛いのは自分だけじゃないんだ!」という勇気をもらえるのはとても大きいことだと思います。
2010.04.16 Friday 07:32 | 介護・看護の現場で | - | -

お水さん、ゆっくり沸いていいよ、と思える心の余裕

お湯を沸かすとき「ゆっくり沸いてね」と思ったことはありますか? 
私なんかも恥ずかしながら、朝起きて一秒でも効率的に、なんてことしか考えずにスイッチを入れています。たいがい私たちは「早く沸く」ことに価値を見いだしがちですが、こんな些細な態度に私たちは実は台所では緊張しているという事実の一端を垣間みることができます。

台所では私たちは交感神経、副交感神経、どちらが優位なのでしょうか。 男性であれ女性であれ、料理が好きか嫌いかも別として、キッチンにたつ時は火も使いますし、刃物もある。無意識のうちに料理に「取り組む」ことで意識を張り巡らせている私たちの身体の中で優位になっているのは明らかに「交感神経」の方なのです。 決して温泉につかっている時の極楽モードで料理をしているわけではないのです。 キッチンに立ったとたんにリラックス、断然副交感神経優位という方はもう、ベテランのおばあちゃんの境地に到っていると言えるでしょう。

それに加えて、食べてもらったときに「美味しい!」と言ってもらえれば嬉しいものの、残されたり文句を言われたりしたときつい「むっ」としてしまうのは、やはり交感神経が優位なモード〜何らかの緊張状態にあるからなのでしょう。 
せめてお湯を沸かすときに「お水さん、ゆっくり沸いていいよ」と思う気持ちを持つ訓練をするだけでも、私たちの台所時間の緊張は随分変わるかもしれません。
2010.04.15 Thursday 07:51 | - | - | -

4月のワークショップ情報:更新しました☆

2010年のスケジュールです ☆4月のマタニティ詳細アップしました!

7月初旬に第一子の出産を予定いたしております。性別はまだわかりませんが、おかげさまで生徒の皆様の励ましに支えられ、経過は至って順調です。 
先日の大阪でのリストラティブヨガ・ワークショップを最後にしばらく産休にはいらせていただくことになりました。出産まで講習等ははお休みさせていただきますが、簡易な取材、監修、原稿等はお請けしておりますので、ぜひお声がけ下さい。
実務復帰につきましては産後の体調次第になりますが、こちらのウェブサイトならびにブログにてご案内申し上げます。

臨時開催のお知らせ
妊娠30週(8ヶ月) の母体を活かし(?)マタニティヨガ・指導者養成講座開催します。
おそらく一回限りとなりますので、母子共々皆様にお会いできますこと楽しみにいたしております。
4/24 (土) New !! 
マタニティ・ヨガ・ティーチング・スキルアップ講座 @ Lotus 8 (東日本橋)
詳細、お申し込みはロータス8様のウェブサイトよりお願いいたします。
妊娠8ヶ月、かなりお腹が大きくなっているかと思います。実物の妊婦が講師です☆
産休中の臨時開催となりますので、ご都合のつく方はぜひ受講ご検討ください。
体調万全で臨めるよう頑張ります☆
2010.04.15 Thursday 07:49 | - | - | -

非暴力の武術

徳川家の陰の公安と言われた「柳生家」に伝わる「新陰流」をご存知でしょうか。
実を言うと、私は最近教えていただいたばかりです。これは、徳川時代を300年平和に治める鍵となった「無駄な戦をしない」兵法を今もなお受け継ぐ武術の流派なそうです。 http://ja.wikipedia.org/wiki/柳生新陰流 

武力による解決をせず、国を治める:300年も安泰の世が続いた徳川時代というのは世界にも例がないそうです。ヨガでいう「アヒムサ〜非暴力」に通じるところがありそうで、関連書籍を読んでみようと思います。
2010.04.15 Thursday 07:48 | - | - | -