メディカルヨガ:著者のティモシー先生からのニュースレターより

ティモシー先生からのデンマークからのレポートです。

リズ(仮名)は激務のストレスによる慢性疲労、不眠、そして不安症に悩まされていました。彼女は数年、ヨガを続けてきていたのにもかかわらず、です。そこで、先生はボルスターに身体をあずけた仰向けの合踵のポーズ(コブラーポーズともいう)を処方してみました。 

ゆるやかなバックベンドを日常の習慣にできることから、きっとこのポーズはリズの不調を改善するだろうという見込みあってのことでした。ヨガのポーズの効能は一つだけでなく、複合的に効いてくることに意味があるのです。 仰向けの合踵のポーズを含め、ボルスターに背中を預けるポーズはリストラティブでありながら、背中を緩やかに反らせることにより、活性化も見込めます
Lizは一日の大半を背中を丸めながらコンピュータの前で過ごします。猫背になるだけでなく、首のカーブが損なわれます。これはリズだけでなく、多くの現代人が知らず知らずのうちに陥っている悪い姿勢です。ヨガをやっている人たちは、背中を反らすことでいかに活力がわいてくるかを実感として知っています。アーユルベーダの観点からはリズはVata(ヴァータ)が行き過ぎているため、数分感動きをとめて休むだけでも体質が穏やかになるのです。このポーズのもう一つのメリットは、下腹部の腹筋が自然に緩んでいくことです。多くの現代人がまた、このあたりにいい知れぬ慢性的な緊張を抱えています。 大人になるにつれ、おなかを薄く見せるためにおなかを引っ込めたりしているからです。
リズはワークショップの時間をフルに使って、このポーズを楽しむようにしました。さて皆さんがヨガセラピーを教えるときは、きちんと患者さんを観察してみましょう。ポーズをよりよくするための微調整ができるようになります。 ティモシー先生がリズを観察した限りでは、下腹部に緊張が残る以外は特に不具合は見当たらなさそうでした。一般的な腹式呼吸では息を吸うときおなかが自然にふくらみ、息を吐くときに下腹部はリラックスします。そして、息をはきながら背中は沈み込んでいきます。リズの場合はそれが逆になっていたのです。息を吸いながらおなかを硬くし、息をはきながらおなかが膨らんでいたのでした。先生は彼女に奇異呼吸のことを伝えました。リズは驚き、かえって不安になってしまったようでした。しかし、結果的にそれに気づいたことがよかったのです。 
先生が観察した限り、リズの性格はA型、つまり「戦うか逃げるか」つまり、常に交感神経のスイッチが入りっぱなしなのです。息をはくときに、心拍数にも自然な緩和がありませんでした。(respiratory sinus arrhythmia)自律神経のバランスがうまくとれていない証拠です。それが彼女の不眠症状、慢性疲労、不安症状などの諸症状を引き起こしていたのでした。自律神経のバランスが崩れると、かっとしたり、落ち込みが激しくなったりもするのです。実際、不規則で、浅く、肩で息をするような呼吸はそのひとの行動様式を反映しているものです。 ティモシー先生は、リズの手をおなかの上にのせてみました。彼女が、おなかのふくらみやへこみを感じられるようにです。そうすることによって、たちまち彼女は正しい腹式呼吸に戻ることができました。気持ちいいリストラティブのポーズで、正しい呼吸のまま、穏やかに10数分休息を取ることができたのです。  リズには骨盤底筋群の緊張も疑われていました。そこで、ちゃんとした腹式呼吸ができるようになった次の段階として、骨盤底への意識を促してみました。リラックスして背中をボルスターに委ねた状態で、息を吸うにつれ、骨盤の底が広がり柔らかくなっていく様子をイメージし、息をはきながら、骨盤が優しくしまっていき、持ち上がる様子をイメージするのです。実際、骨盤底の筋肉は自分の意志でコントロールしがたい筋肉群ですが、彼女に起こった変化は、感情面のリリースでした。呼吸に意識を向けることで、彼女は自分の心の中のものと向き合い、そして自然にそれを外に追いやることができていったのです。その後ティモシー先生が彼女の脈をとったとき、それはとても落ち着き、自律神経のバランスも整っていったのでした。 最後に、踵をあわせて自然な重みで膝を開くことでリズの内股の筋肉に柔軟性が戻っていきました。なので、最初はプロップスを差し入れなかったのですが、数分経たないうちに、彼女は膝がおちるのを訴えたため、膝の下に丸めた毛布を差し入れたところ、彼女は安心してとてもリラックスできるようになったのでした。 この寄りかかった仰向けの合踵のポーズを数週間続けたところ、彼女からは「私にとても合うポーズだったようでした!とても深く休めるし、呼吸を教えてくれました。身体が自然に開き、感情もリフレッシュできます。自分がポーズをしているのをいつでもイメージできます。ストレスがたまったらできるいろんな呼吸法はあるけど、こんなに簡単で確実な方法はないようです」という喜びのお便りが来ました。 実はこの最後の言葉に、ヨガの秘訣が隠されています。 ストレスがたまったときに自分のために何かができる、という気づきこそが、彼女の人生を変えていったのです。

(お知らせ)7-9月のワークショップ情報更新しました。↓
2011.07.11 Monday 11:14 | ヨガとストレス緩和 | - | -

家族でやっています!Yogini 37ページ:ふたりヨガ

現在発売中のYoginiの36ページにリストラティブヨガのポーズを紹介させていただきましたが、その隣のページ、37ページに峰岸先生がふたりヨガを紹介されています。

実はこの子供のポーズ、以前から主人とよくやっていたのですが、我が家では息子が生まれてからはなんとトリプルヨガになっております!
先日参加したハワイでのヨガレッスンの先生がとってくれました。

下記、峰岸先生のコメントより

「自分を全身で支えてくれる存在がいると、人は無条件に安心できる。不安で縮んだ身体の全面を伸ばし、心に強さを与えよう。このポーズは相手の呼吸のうねりに同調させることで、自分の呼吸が拡張される。心臓周囲が広がり、深い落ち着きと安らぎが得られる」

写真では見えにくいのですが、真ん中で主人が子供のポーズをとっています。子供のポーズをとる人の腰のストレッチにもなるポーズです。

(お知らせ)2011年8-11月、ワークショップ情報更新しました。
2011.07.10 Sunday 09:56 | ヨガとストレス緩和 | - | -

禅と痛みの研究

禅に焦点を当てた心理学や脳の研究が盛んになったきっかけとなった本に James Austin博士のZen and the Brain という本があります。

座禅は姿勢を正して座った状態で精神統一を行う禅の基本的な修行法です。
姿勢、呼吸、心を整え、呼吸は自然に任せながらも、鼻からゆっくり吸って吐きます。座禅をすることにより心の落ち着きが得られ、ストレスが減るという研究結果は書物により西洋社会にも広く知れ渡るところです。研究では、静かな環境や正しい姿勢、呼吸法が、忙しい現代社会で混乱した脳の機能をデフォルトモードに戻すのではないかと言われています。

また、座禅の研究報告の中には痛みの軽減に役にたったというものもあります。
痛みに悩む患者さんが座禅を基本としたストレス解放のプログロムに取り組むことで、その痛みを軽減できたというものです。ただしこれは、身体的痛みそのものに変わりはないが、座禅を通じて痛みに対する感じ方が変わったのではないか、という考察です。しかし一方で、座禅や瞑想が脳内にある痛みの伝達経路に影響を及ぼしている可能性も研究されています。「Emotion」という心理学会誌に、禅の瞑想は痛みと感情を制御する脳の一部(前帯状皮質)を厚くさせ、痛みに対する感受性を低下させるという研究結果が発表されました。
前帯状皮質とは血圧や心拍数の調節のような自律的機能の他に、報酬予測、意思決定、共感や情動と言った認知機能に関わっているとされる部位です。座禅には意識だけでなく、脳の形状を帰る効果もあるということがわかる研究です。
(以上、5/5 角田佳菜子さんのコラムより一部抜粋)

実はヨガにも禅の瞑想と同じような効果があると言われており、北米を中心に、科学的検証が地道にすすめられています。Yoga as Medicine (2010年日本語版刊行予定)に、各種症例ごとに事例と処方箋が紹介されています。

2010.08.15 Sunday 23:45 | ヨガとストレス緩和 | - | -

エンドロフィンを出す完全呼吸法

どうしてヨガの完全呼吸法は身体にいいと言われるのでしょうか。
それは、完全呼吸法による深い呼吸がエンドロフィンを出すと言われているからです。
エンドロフィンとは脳内麻薬とも呼ばれますが、脳内ホルモンの一つです。
モルヒネの6.5倍の鎮痛作用があり、脳を活性化させる働きがあります。また、血流を向上させ、免疫系の働きを活発にして、病気から身体を守ります。特にストレスを解消する働きに注目が集まっています。 

このβ-エンドロフィンを分泌させることができれば、免疫力を強化し、老化を防ぎ、自己治癒力を高めることができますが、このホルモンは楽しいと感じられないと分泌されないという性質を持ちます。運動中はこのエンドロフィンが豊富に分泌され、精神活動にも好影響があり、何事にも前向きになることができると言われています。ですので、エンドロフィンは「成功ホルモン」とも言われています。
2009.12.09 Wednesday 12:38 | ヨガとストレス緩和 | comments(0) | trackbacks(0)

ソマサイコロジー

物質、肉体一辺倒だった西洋が、今注目している学問、それがソマサイコロジー」心は体に影響を与えるはずだ。日本人の感覚からすると別に新しい感じはしないのですが(「病は気から」)アメリカでは盛んに研究が進められています。 おじいちゃんの肩をもんであげる孝行なお孫さんが昔はいました。おじいちゃんはお孫さんとのつながりを感じるだけで、老化もゆっくりになる気がしました。でもきっと、今はお孫さん自身に余裕がないのです。現代社会に苦しんでストレスを貯めています。
毎日一カ所、自分の体、肩とはいわなくても腕とか、お腹とかを自分の手で触ってみてください。自分で触ったところには悪意を感じる人はいません。むしろ、大切にしなくては、という気持ちが蘇ってくる、それが Self Touching による癒し効果です。本当は、お孫さんがおじいちゃんの肩を癒す、というのが理想的な社会のあり方かもしれませんが、せめて今の時代は自分で自分の体をまず触ったりもんだりしてあげてみましょう。そうすれば、心と体の結びつきを本能的にキャッチできるのではないでしょうか。
2008.08.29 Friday 15:47 | ヨガとストレス緩和 | - | -

リラックスの貯金

ストレスと同じように、リラックスも貯められます。
リラックスがたまりやすい身体作り、心作りは可能です。
リラックスとは単なる睡眠や休息ではありません。回復力を伴った、心身ともに柔軟な状態です。さらに、フィットネス(フィット)というのは、疲労感を感じることなく毎日を送れる状態です。
リラックスと同様に、代謝のいい身体、代謝のいい生活習慣も貯金できます。
2008.08.18 Monday 10:37 | ヨガとストレス緩和 | - | -

ヨガとストレス緩和:慈恵会大学病院の例

東京慈恵会医科大学附属第三病院では、2007年6月からヨガを職員の福利厚生に導入しています。事務部管理課の課長・今関美津男さんは導入のいきさつをこう説明してくださいました。「私どもには520〜530人の看護師がおりますが、一年に100人ほどが辞めて行きます。事情はさまざまですが、『忙しすぎて心が疲れ果ててしまう』という、メンタルなものも非常に大きい。せっかくキャリアを積んできて辞めてしまうのは、本人にも病院にも大きな損失です」心のケアのための相談室もあるが、なかなか気軽に訪ねにくい。しかしヨガ教室ならば“美容のため”“運動不足解消のため”など、明るくおおっぴらに行きやすいと考えた。「忙しい中で時間を作るのは容易でないとは言いながら、毎回レッスンには7〜15人が顔を出しています。男女問わず、看護師だけでなく、医者も参加していますよ」

詳しくは 雑誌 Yogini 2008年 6月号 36ページ「ハードな職場のストレスを解き放つ、みんなお待ちかねの一時間」をご覧下さい。

2008.08.17 Sunday 16:58 | ヨガとストレス緩和 | - | -